【防犯講演参加レポート】特殊詐欺の「いま」を知る
湖南市の『十二坊温泉ゆらら』さんで開催された、特殊詐欺をテーマにした講演会「それって、詐欺ちゃうか!」に参加しました。
講師は甲賀警察署の刑事さん。身近で起きている特殊詐欺の現状や代表的な手口、被害を防ぐためのポイントについて、第一線で対応されている立場から具体的なお話を伺う内容でした。
単なる手口紹介ではなく、「いま現場で起きていること」を知ることができた、貴重な機会でした。
コロナ以降、増えている犯罪
講演では、コロナ以降の犯罪傾向として、特に増加が目立つものとして、
1、性犯罪
2、組織犯罪
3、特殊詐欺
の三つが挙げられました。
まず性犯罪については、単純に件数が急増したというよりも、これまで表面化しにくかった被害が顕在化してきた側面があるとの説明でした。
SNSの普及や相談環境の整備により、被害が可視化されやすくなったことも背景にあると思われます。つまり、社会の変化によって「見えるようになった犯罪」でもあるということです。
次に組織犯罪については、社会構造の変化が大きく影響しているとのことでした。
コロナ禍以降、経済的に不安定な層が増え、孤立や困窮が深まった結果、闇バイトなどの形で犯罪組織に取り込まれる若者が増加しているという現状があります。犯罪は単独犯ではなく、役割分担された組織として機能しており、実行役、かけ子、受け子、資金管理などが明確に分業化されています。
そして特殊詐欺もまた、この組織犯罪の流れの中に位置づけられる犯罪であるというお話がありました。
もはや個人の思いつきや単発的な犯行ではなく、マニュアル化され、データが共有され、成功事例が分析される、いわばビジネスモデルのような形で運営されているのでしょう。
私が質問した「なぜ被害額がこれほど増えているのか」という問いに対しても、騙す側のいわば企業努力が高度化していることが一因だという回答がありました。
また、オンラインカジノや、借金の問題とも無関係ではないという話もありました。オンラインカジノなどで多額の負債を抱えた若者が、返済のために闇バイトへと流れ、特殊詐欺の実行役になるケースがあるということです。つまり、特殊詐欺は単独の犯罪ではなく、経済的困窮や地下経済、若者の孤立といった問題と結びついた構造的な犯罪であることが示されました。
他に印象的だったのは、被害者側も借金をしてまで支払い続けてしまうケースがあるという話です。一度支払ってしまうと、そこで止めることができず、恐怖や焦りの中で追加の送金を繰り返してしまう。ここにもまた、組織的に設計された心理的な圧力が働いているとのことでした。
こうして見ると、コロナ以降に増えているとされる三つの犯罪は、それぞれが独立しているのではなく、社会の不安定化、孤立、経済的困窮、情報環境の変化といった共通の背景を持っていることが分かります。特殊詐欺もまた、その延長線上にある現代的な組織犯罪の一形態であると感じました。
特殊詐欺は、広がりと形を変えている
これまで特殊詐欺といえば、いわゆるオレオレ詐欺が代表的な手口として広く知られてきました。実際、家族を装って不安をあおる手口は、長年にわたり大きな被害を生んできました。
今回の講演では、そうしたオレオレ詐欺の流れを踏まえつつ、現在はさらに手口が多様化しているという説明がありました。
現在目立っているのは、
・ニセ警察官を名乗る詐欺
・還付金詐欺
・SNS型投資詐欺
・若者を巻き込む闇バイト型の犯罪
などです。
手口はより巧妙になり、名乗る立場も家族から警察官や公的機関へと広がり、接触手段も電話だけでなくSNSへと拡大しています。
さらに重要なのは、被害者像が変化していることです。高齢者だけでなく、若年層もターゲットになっています。同時に、加害者側にも若者が増えているという現実があります。経済的困窮やオンラインカジノなどをきっかけに闇バイトへと流れ、組織の一部として関わってしまうことがあります。
特殊詐欺は一つの手口ではなく、社会の変化に合わせて姿を変えている犯罪であることを、あらためて感じました。
被害額が急増している本当の理由
特殊詐欺の被害額は、前年と比較してほぼ倍増しています。
その背景について質問したところ、刑事さんは次のように話されました。
- 騙す側の『企業努力がすごい』
- 組織化・分業化されている
- 1件あたりの被害額が大きくなっている
- 借金をしてまでも払い続けるケースがある
ここが非常に印象的でした。
「借金をしてまでも払い続けてしまう」これは単なる『過信』では説明できません。
一度支払ってしまうと、
- ここまで払ったのに止められない(サンクコスト効果)
- 止めると逮捕されるという恐怖
- 自分が騙されたと認めたくない心理
などが重なり、心理的拘束が強まるのだと思います。
オンラインカジノと借金の構造
講演の中では、オンラインカジノや借金の問題にも話が及びました。
ここからは私自身の理解も含まれますが、オンラインカジノなどをきっかけに多額の負債を抱え、その返済のために闇バイトに手を出してしまう若者がいるという現実があるようです。そうした流れの中で、特殊詐欺の実行役として関わってしまうケースもあります。
また、被害者側についても、借金をしてまで支払いを続けてしまうケースがあるという話がありました。一度支払ってしまうと、不安や恐怖の中で追加の送金を重ねてしまうという現実があるのでしょう。
これらの話を聞いて、借金という問題が、加害者側にも被害者側にも影響を及ぼしているのではないかと感じました。特殊詐欺は単独の出来事というよりも、経済的困窮や不安定な状況と結びついた、より構造的な問題でもあるのかもしれません。
耳がついている者であれば誰でも騙せる
事情聴取を受けた詐欺犯が、こう語ったそうです。
「耳がついている者であれば、誰でも騙せる。」
この言葉は非常に衝撃的でした。
詐欺というものは、知識の量や頭の良さだけで防げるものではない。
善悪の判断力の問題でもない。そうした側面を含みつつも、相手を追い込むように状況を組み立てていく犯罪であるということを示しているように感じました。
だからこそ、最も有効な対策は、無視することだという話がありました。
会話が始まらなければ、相手は心理的な拘束をかけることができない。電話に出ない、途中で切る。それだけで被害を防げる可能性が高まるのでしょう。
シンプルですが、非常に本質的な話でした。
入口と出口の強化
詐欺対策について、印象的だったのが「入口」と「出口」という考え方でした。
入口とは、詐欺の手口を知ることです。
今日のような講演会や勉強会、日頃の注意喚起によって知識を持つこと。まずは入り口で気づく力を高めることが重要だという説明がありました。
一方で、出口の強化も欠かせないとのことでした。
ATMでの注意表示や、金融機関での声かけ、振込前の確認など、実際にお金を動かす直前で止める仕組みです。人は焦りや不安の中では判断力が鈍るため、最後の行動直前でブレーキをかける工夫が必要だと感じました。
知識を持つことは大切です。しかし、知識だけでは防げない場面もある。だからこそ、行動の直前で止める仕組みが重要になるのだと理解しました。
そしてもう一つ、強く感じたことがあります。
それは、そもそも接触しないことが最大の防御になるということです。
電話に出ない。違和感を覚えたらすぐに切る。会話を続けない。
接触がなければ、心理的な拘束も始まりません。
入口と出口の強化。その両方が大切ですが、その前段階として「接触しない」という選択が、実はもっともシンプルで強力な対策なのかもしれません。
地域性の話『関西人はオレオレ詐欺に強い?』
全国的に見ると、関西ではオレオレ詐欺があまり響かなかったという話もありました。
理由ですが、「関西人はコミュニケーション能力が高いのではないか」とのこと。
しかし、その後継とも言える還付金詐欺には多くの被害が出たそうです。
会場には笑いも起きましたが、これは実はとても深い話です。
詐欺は、地域文化や心理特性まで分析している可能性があるということです。
そして最後は『神だのみ』
資料には善水寺のお札が入っていました。
刑事さんは、「最後は神だのみ」とユーモアを交えて締めくくられました。
これは冗談のようで、「自分は大丈夫」という過信を捨てることの象徴だと感じました。
私自身の気づき
私が今日のお話全体を通して強く感じたのは、現場のリアルな声を聞くことの大切さです。
統計やニュースだけでは見えない、実際の温度感や背景を知ることで、理解の深さがまったく違ってくることを実感しました。
犯罪は社会の変化とともに姿を変えていきます。
だからこそ、私たちの認識も固定せず、学び続ける姿勢が必要なのだと思います。
今回の講演は、その意味でも非常に学びの多い時間でした。
そして、これから自分が伝えていく内容についても、常にアップデートし続けていきたいとあらためて感じました。


